胸郭の可動性
Training
胸郭とは胸椎(背骨の胸の部分)、肋骨、胸骨で形成されており、心臓や大きな血管・肺や食道などの臓器を保護します。
このため何となく動きのない箇所というようなイメージを持ってしまいがちですが、実は胸郭の可動性は大変重要です。
まず、肋骨ですが正しい呼吸のためには肋骨の可動性が必要です。
呼吸の際、上位肋骨は前後に動き、下位肋骨は左右に動きます。
どちらも動きに制限が出ることが多いですが、特に下位肋骨は腹直筋(6つに割れるシックスパッドの筋肉)が過度に収縮したり、周りの筋と癒着することで肋骨を下に引っ張ってしまい左右に開くことを妨げることがあります。
スポーツをされる方、特にマラソンなど長距離を走るような心肺機能が重要な競技をされる方は肋骨の可動性低下が酸素摂取量に影響するため見過ごせないポイントになります。
一般の方も肋骨の可動性低下は将来的に肺炎や気管支炎などの呼吸器疾患に繋がる恐れもあるので、可動性をしっかり維持することが重要です。
また胸椎の可動性もスポーツをやる方にとっても、一般の方にとっても重要でこの部位の可動性が低下すると腰や肩に悪影響を及ぼします。
最近は椅子座位により猫背気味の姿勢の方が多いですが、この影響で胸椎は後弯(後ろに突のカーブ)が強調され、伸展に制限がでるケースが多いです。
そのため腕を上げる動作で肩にストレスがかかり易くなります。
また胸椎は回旋の可動性の大きな関節ですが、これが低下することで腰部に過剰なストレスがかかり易くなります。
このように胸郭の可動性を保ち、正しい呼吸を続けるために今日は胸郭のトレーニングをご紹介します!
まず、下位肋骨の柔軟性のチェックです。
肋骨の下方、前外側を親指で触れます。
そして、大きく息を吸った際の肋骨の動きをチェックします。
肋骨に触れている親指が左右に開いていけば正常です。
もし、左右に開かずに上にあがるように動けば下位肋骨の拡張不全のサインです。
次に胸椎の回旋可動性のチェックです。
両手を肩の高さまで上げて、それぞれの手で反対の腕の肘を掴むようにして胸の前に腕で四角形を作ります。
そのまま胸を左右に回します。
胸椎は左右にそれぞれ訳30°回旋回します。
可動性に制限がないか、左右差がないか確認してください。
その際、胸の前の四角形が崩れないように気を付けてください。
胸郭のトレーニングですが、まずは呼吸トレーニングから実施します。
仰向けに寝て両ひざを曲げた状態にします。
そして、鼻から息を吸って口から吐きます。
この際、息を吸うときは肋骨をしっかり動かすように意識します。
特に下位肋骨を左右に広げるように意識してください。
吐くときは逆に肋骨を折りたたむようにしてから、おへそを背中に付けるようなイメージでお腹をへこませます。
このように腹式呼吸を意識することで横隔膜など呼吸に必要な筋をしっかり使うことが可能です。
次は同じ姿勢で、まず口から息を吐いてお腹をへこませます。
そして先程と同じように鼻から吸ってお腹を膨らませて肋骨をしっかり開きますが、お腹はへこました状態をキープしてください。
この呼吸で肋骨を動かす腹横筋上部と骨盤を安定させる腹横筋下部を同時に使うことが可能になります。
次のステップは上記と同じ呼吸を行いながら、骨盤を後傾させて腰と床との隙間を埋めるようにします。
こうすることで腹直筋が収縮して、下位肋骨の可動性を維持するのが難しくなりますから特に息を吸うときに肋骨を左右に広げることを意識してください。
このエクササイズで腹直筋を収縮させながら下位肋骨の可動域を維持するトレーニングになります。
スポーツをされている方には特に重要な呼吸になります。
これを更に進化させると両手両足を上げて呼吸に合わせて手足を動かすデッドバグ(Dead Bug、死んだ虫)になります。
手足を上げると骨盤を後傾させて腰と床の隙間を埋めることや、また下位肋骨の左右への動きをキープすることが更に困難になります。
手伝ってくれる方がいる場合は腰の下にチューブや紐などを挟んで引っ張ってもらい、抜けないように意識してください。
骨盤後傾がキープできなければ抜けてしまいます。
最後に胸椎回旋の可動性を出すエクササイズです。
正座の姿勢から上体を床に伏せます。
こうすることで腰椎ではなく胸椎が動かし易くなります。
片手を身体の真横に伸ばします。
この際、親指が床を向くようにしてください。
これは大胸筋という胸の筋肉によって胸椎の回旋が制限されることを避けるためです。
そして、手を天井の方に向けるように上げて胸椎を回旋させます。
この時、視線は指先を見るようにしてください。
ゆっくり上げて、ゆっくり下します。
これを無理のない範囲で繰り返します。
また呼吸をとめないように気を付けてください。
今日は胸郭の可動性に関するトレーニングをご紹介しましたが、この部位の可動性は肩や腰へのストレスを減らすだけでなく、股関節など下半身で生み出したパワーを体幹を通して上肢へ伝えるためにも大変重要です。
是非、実践してみてください!!