胸郭の可動性 2
Training
以前にも『胸郭の可動性』について書かせて頂きましたが、今回はその続編ということで再度、胸郭について情報をご提供させて頂きます。
繰り返しになりますが、胸郭は胸椎(背骨の胸の部分)、肋骨、胸骨で形成されています。
この中で胸椎の伸展の動きが制限されることが多いです。
現代は椅子座位で過ごす時間の長い方が多いですが、この姿勢では背中が丸まり、頭の位置が前方になる、いわゆる猫背になりやすいです。
その姿勢で筋の長さが固定されることで胸椎の伸展が制限されます。
多くのスポーツでも見られる、手を頭上に挙げるオーバーヘッドの動作では肩の可動性と同時に胸椎の伸展が必要です。
肩の可動性に問題がなくても、胸椎の伸展に制限があることで肩にストレスがかかり肩を痛める原因になります。
また胸椎の伸展を腰椎(背骨の腰の部分)で代償しようとして無意識に腰を反り過ぎて腰痛の原因にもなってしまいます。
また胸椎の回旋の動きが制限されてしまうと、腰椎が代わりに動きを代償することになります。
腰椎は元々、回旋の可動性が低いため胸椎の動きを代償するために腰にストレスがかかり、これも腰痛の原因になります。
そこで、今回は胸椎の伸展と回旋についてのエクササイズをご紹介します。
まず、伸展のエクササイズからです。
胸郭前面の胸筋や上腕の筋などの柔軟性不足が胸椎伸展の制限になるケースがあるので、まずはその部位からです。
仰向けに寝転び両膝を曲げます。
この時、腰と床をしっかり着け隙間ができないように注意してください。
肩と肘が90°になるようにして手の平は天井に向けます。
そして、手の甲・前腕・肘が床から離れないように両手をスライドさせて頭上で指先をタッチさせます。
この際、下位肋骨が前方に浮いてしまう方は胸郭の可動性に問題のある可能性があります。
もし、両手が頭上にくるまでに手の甲・前腕・肘などが浮いてしまったら、そのまま元の位置に戻します。
これを繰り返すことで少しずつ可動性は向上します。
また、過去に肩関節脱臼などの既往や肩の動揺性が疑われる方は、このストレッチは避けてください。
このエクササイズが楽にできる方は壁にもたれて長座になり、同じことをするバリエーションもあります。
次は、広背筋のストレッチです。
仰向けになり膝を90°曲げます。
この時も腰と床の間に隙間ができないようにしてください。
肘を肩の前にして90°曲げます。
両手の手の平は顔の方に向けます。
そして、最初に大きく息を吸います。
両手を頭上に動かしながら息を吐きます。
これを数回繰り返してください。
もう一つ、胸椎伸展のエクササイズです。
ベンチや椅子などの前に深くしゃがみ込み、片手で身体を支えます。
もう一方の手を頭上に挙げ、視線は手の方向にします。
片手を挙げるオーバーヘッドモーションでは胸椎の伸展と挙げている側への回旋が必要になるため、これらの動作の習得に繋がります。
深くしゃがんでいることで腰椎の代償動作も軽減できます。
最後は胸椎回旋のエクササイズです。
まず、床に横向けに寝転び、上側の脚を下側の脚にクロスするようにします。
脚をクロスすることで腰椎の代償動作を抑えることができます。
そして、上側の手を天井の方向に伸ばします。
下側の手は胸の前で床に置いておきます。
このスタートポジションから、胸椎を回旋するように下側の手を上側の手に近付けていきます。
無理のない範囲で数回繰り返してください。
今回は『胸郭の可動性』の続編として、特に胸椎の伸展と回旋のエクササイズをご紹介しました。
しかし、胸椎は肋骨と接して関節を形成しているため、肋骨の可動性が胸椎に大きく影響を及ぼします。
そこで、次の機会には肋骨の可動性を高めるエクササイズもご紹介します!!