鼠径部の痛み
Bodymaintenance
『スポーツによるキック動作やランニング中などに股関節の周囲が痛い』という経験はないでしょうか?
少し練習を休むと治まるけど、練習を再開するとまた痛みが出る。
これはグロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)かもしれません。
今日はこのグロインペイン症候群についてお話させて頂きます。
サッカーをやっている人が発症しやすいと言われますが、ラグビー・アイスホッケーなどそれ以外の競技でも発症するケースは多いようです。
元サッカー日本代表の中田英寿選手や長谷部誠選手もこの怪我を経験されたそうです。
最初はボールを蹴る時や全力で走る時に痛みが出ますが、悪化していくと軽度の運動でも痛むようになり、安静時でも痛みを感じるようになるケースもあります。
このグロインペイン症候群ですが、どのような病態かというと“恥骨結合炎” “内転筋付着部炎“ ”腹直筋付着部炎“ ”内転筋損傷“など様々な怪我の総称になります。
主な症状ですが、”鼠径部の深層や下腹部の痛み“ ”スポーツによる痛みの悪化“ ”股関節内転筋収縮時の痛み“ ”腹筋運動の動作での痛み“などがあります。
治療としては安静や運動療法などのリハビリで回復するケースが多いですが中にはなかなか回復せず手術が必要になるケースもあります。
グロインペイン症候群はなぜ起こるのか?
原因についてですが、股関節周囲の筋肉のバランスが崩れることによる骨盤の歪み、いわゆる骨盤のマルアライメント・体幹の機能が低下することによる骨盤の安定性の低下などのコンディションに対して、スポーツによるストレスが繰り返されることで発症すると考えられます。
運動療法ですがストレッチやエクササイズで股関節周囲の筋バランスを改善します。
まずはストレッチの例をいくつかご紹介します。
① 鼠径部のストレッチ
股関節前面で骨盤のマルアライメントの原因になっている筋肉の柔軟性を向上させます。
・脚を前後に開き、後ろの脚の膝を床に着きます。
・身体を前方にシフトして後ろ側の脚の股関節前面をストレッチします。
・上記の状態から脚がうしろになっている側の腕を天井に向けて伸ばし、脇を覗きこむように身体を捻ります。
・こうすることで、より多くの範囲をストレッチできます。
② 大臀筋のストレッチ
滑走性を向上させて大臀筋を収縮しやすくします。
・仰向けになり膝を胸に抱えるようにして、お尻をストレッチします。
・上記の状態から膝を反対の胸に向けて引き付けるようにします。
・こうすることで、より多くの範囲をストレッチできます。
次にエクササイズの例をいくつかご紹介します。
① 大臀筋のエクササイズ
大臀筋の機能向上を図ります。
・膝を90°に曲げて、足と膝の間はこぶし1個分くらい開けます。
・ゆっくり身体を持ち上げて数秒キープし、ゆっくり下ろします。
・このとき腰を反らないように気を付けてください。
・セラバンドがある場合は、膝の外側にあてます。
・膝を深めに曲げて踵で身体を支え、セラバンドの負荷に抵抗して膝を外側に開きます。
・こうすることで、お尻の外側にある中臀筋にも効くので、より広い範囲でお尻を鍛えられます。
② 腸腰筋のエクササイズ
『椅子座位』などの影響で骨盤が後傾している場合は腸腰筋を強化して骨盤を前傾位に誘導します。
・ベンチ台などに座り腰が丸まらないように気を付けて片脚をゆっくり上げます。
・数秒キープして、ゆっくり下ろします。
・これを繰り返します。
・慣れてくれば、立った状態で両手を頭上に上げて片脚をベンチに乗せます。
・ゆっくり足を上げて数秒キープして、ベンチに着かないところまで下ろします。
・これを繰り返します。
③ 呼吸エクササイズ
横隔膜や腹横筋を正しく使った呼吸を行うことで体幹の機能を回復させます。
・仰向けに寝て両ひざを曲げた状態にします。
・鼻から息を吸って口から吐きます。
・息を吸うときは肋骨をしっかり動かすように意識します。特に下位肋骨を左右に広げるように意識してください。
・吐くときは逆に肋骨を折りたたむようにしてから、おへそを背中に付けるようなイメージでお腹をへこませます。
・上記と同じ呼吸を行いながら、骨盤を後傾させて腰と床との隙間を埋めるようにします。
・こうすることで腹直筋が収縮して、下位肋骨の可動性を維持するのが難しくなりますから特に息を吸うときに肋骨を左右に広げることを意識してください。
・このエクササイズで腹直筋を収縮させながら下位肋骨の可動域を維持するトレーニングになります。
運動療法を開始する前にスポーツドクターの診察をうけて、正確な診断をして頂くことが重要です。
そして、ドクターの指示に従って運動療法を開始してください。
ドクターの許可を得て、これらの運動療法をやってみたが症状が改善しないという方は股関節周囲の筋肉の癒着により骨盤の歪みが起こっている可能性があります。
その場合は癒着している筋肉をリリース(癒着をはがす)する必要があります。
なかなか改善しない時は是非ご相談ください!!